【第4弾】大学芋インタビュー

甘藷生駒 生駒友一店長

「北馬込の大学芋専門店」

※甘藷生駒様の大学芋
※甘藷生駒様の大学芋

甘藷生駒。東京都大田区北馬込にある大学芋専門店だ。

店前に車を止め、迷いもせずに大学芋やスイートポテトを注文するお客様たち。欲しい製品や分量等も知り尽くしているようで、すっかり地元の人の生活動線に確実に組み込まれている人気大学芋屋さんだ。


親子3代続く素材との向き合い

※甘藷生駒2代目・3代目店長並んで
※甘藷生駒2代目・3代目店長並んで

人気もそのはず、昭和5年創業以来変わらずさつま芋と向き合ってきているのである。

時代の変遷と共に、さつまいも問屋(主に、石焼き芋屋さんへの卸し)、そして現在大学芋専門店として形を変えながらも、親子3代も続く老舗を築き上げてきたそうだ。そんな安心感が甘藷生駒にはある。

現在は息子の友一さんと、そのお父様お母様の3人が連携してお店を切り盛りしている。

細かい役割分担は決まっておらず、お父様がパッと「鍋見るね」といえば「じゃあこっち用意する」と友一さん、その瞬間にお母様の手も動く。自然と助け合うリズムがありながら大学芋をつくってゆく3人の姿は、とてもあたたかい。

ちなみにお店の中からも厨房はガラス越しに覗くことができる。お客様の中には、味はもちろん、この厨房の景色にも惚れて買っている人も多いはずだ。

素材は調理で活かされる

※こだわりの調理方法
※こだわりの調理方法

甘藷生駒の大学芋はスティック状も交じる乱切り。このカットは蜜が濃縮される角の美味しさを味わうための秘策とのこと。実際取材者も、生駒さんの大学芋のカリカリジュワッと蜜が溢れ出る食感が大好きで、あえて角を後で食べたりする程である。

そして角だけではなく、頬張るとわかるホクホクのお芋。さつま芋の繊維を感じられる。素材が生きているような大学芋だ。これらの食感を常に再現するため、季節によって揚げ方を変えているとの事。

また、さつま芋を揚げる鍋は特注の深型。気温や湿度等の環境から調理具まで、全ての天候が大学芋を造る上でのパートナーとの事だ。


青物を見る眼

※甘藷生駒様の店頭を彩る花苗
※甘藷生駒様の店頭を彩る花苗

 実は、甘藷生駒さんの軒先では花苗も売っている。街の人により馴染んでもらいやすいようにとの事ではじめたそうだ。考えてみると、さつま芋もお花も同じ青物。店先で可憐に咲く花苗を見ると、さつま芋に限らず青物を見る眼がある事が伺える。

また「さつま芋」ではなく「甘藷」という旧来からの呼称を続けていることからも素材へのこだわりを感じられる。関東で大学芋専門店は何件も見たがお花をいっしょに売っている大学芋専門店も、「甘藷」という文字を残している店も、この甘藷生駒だけではなかろうか。

このようにお店のさりげないシーンに生駒さんの素材そのものへのこだわりを感じずにはいられない。

今後の大学芋

そんなこだわりあふれる甘藷生駒さんの今後について聞いてみた。

まず、家族経営なので、製品数を沢山増やす事は考えていないとの事。次々と絶えず訪れるお客様を見るとその事にも頷ける。今愛されている味を、確実に求めている人にしっかり提供できる様に連携する、そんな想いが感じられた。ちなみに現在はメインの大学芋と、さつまいもの薄切り、芋ようかん、スイートポテト、ふかし芋がラインナップになっている。

地域に寄り添う

※創業時の甘藷生駒
※創業時の甘藷生駒
※甘藷生駒様の戦後店舗
※甘藷生駒様の戦後店舗

一方で商いだけに留まらない今後の展望も伺う事ができた。それは地域に貢献したいという想いだ。過去にも地域との関わりでは、お祭りでの出店や、障害のある方々の販売所での販売等を行っている。また夏場は購入等関係なく休憩できる椅子とテーブル、そして吸水コックを設置等している。年配の方はじめ、束の間の休息を得る事ができたのではないかと思う。

このような事もあり、現在も地域と距離の近いお店である事は私がお店にいても感じたことだが、「まだまだ地域貢献なんて言えない」と謙虚な生駒店長。現状に満足せずに、より地域に寄り添ってゆこうとする名店の姿を感じた。もしかしたら、甘藷生駒さんというお店が存在するだけで十分で、それ以上の特別な事は必要ないのかもしれない。

 ちなみに、3代目店長友一さんは早稲田大学出身。大学芋の発祥の地は、東大か早稲田かという議論があるので伺ってみたところ、「以前その検証で東大の可能性が高いというTVを見ましたので、東大では?」との事。甘藷生駒さんの起源は「大学芋」という名称の由来よりも、「甘藷生駒」というお店自体に歴史が刻まれているのだと感じさせられた。

私も北馬込に住みたい。そして大学芋を毎日食べて、苗を飾って・・・生駒さんの地域と甘藷生駒のあり方への熱い想いを感じ、ご近所さんがとても羨ましく思えたインタビューだった。このような地域に愛されるお店が、より多くの地域の人から愛される事を大学芋協会は期待する。このインタビューで少しでも生駒さんの人柄と大学芋に惹かれたならば、是非馬込に出かけて欲しい。



<店舗情報>

【場所】http://tabelog.com/tokyo/A1317/A131712/13043674/

【食感】外カリッ、中ホクホク。

【胡麻】黒胡麻。

【芋種】紅こうけい、紅あずま等。

【製品】大学芋、薄切り、スイートポテト、ふかし芋等、