【第5弾】大学芋インタビュー

ねぎし丸昇 大場店長

「大学芋」「おでん」が食べられる店・東京入谷「ねぎし丸昇」

     輝くねぎし丸昇様の大学芋
     輝くねぎし丸昇様の大学芋
   全種類食べたい、うすくちおでん
   全種類食べたい、うすくちおでん

しっとりクセのない甘さがする

とろとろの大学芋、

昆布だしがふわっと香る

うすくちのおでん・・・

秋冬と限らずとも 両方があたたかいまま頬張れる場所があったら。

どんなにいいだろう。

 

そんな望みが実現するお店がある。

この東京荒川区入谷(日暮里駅近)にある「ねぎし丸昇」さんである。

 

多分「大学芋」「おでん」のイートイン店は、日本でここしかないのではないだろうか。


「鍋」で人を幸せにするには

40年前、丸昇さんがお店を構えようとした時、手元には商売の資金もほとんどなかった。

けれども、鍋1つで人を幸せにできるお店はないかと考えたのが始まりだった。

そこで店長は最初に「味」を追求してから提供するものを決める道を選んだ。


築地のとある老舗料亭に勤務をはじめた。同じ料理は二度と出さないというこだわりがあるくらいの店なので、勉強には恰好の場であった。

おだしの取り方、切り方、揚げ方・・・1つ1つ、自らのお金を出して味わう事で舌の感覚を研ぎすましていった。

その後、時は来た。

選んだのは「大学芋」「おでん」。

これは料亭で修行した味の「甘い」も「しょっぱい」も両方を味わえる店を構えたいと思ったからだ。

(筆者もそうであるが、しょっぱいものの後には甘いものを、甘いものの後にはしょっぱいものを欲してしまう。そして心は満たされる。人間の原理なのだろうか。そんな最強の組み合わせで、「ねぎし丸昇」はスタートした。)

自分にとっての一番を探し続ける

     厨房に立つ大場店長
     厨房に立つ大場店長

丸昇さんはサツマイモを信頼の置いている問屋様から仕入れている。その仕入れた芋に合う調理、いかに活かせるかという事が毎日の勝負である。

 

大場店長は和食の出なので、生のサツマイモをかじって味を確かめる。それが一番素材を知れる方法との事だ。

けれども「人が変われば、確認の仕方も違うよ」としっかり注釈を付ける大場店長。例えば サツマイモ屋さんでは、土をなめて確かめられる人もいる」との事。

このように大場店長の見る世界は広い。

自分にとって一番の方法が、全共通の常識ではない。

でも沢山の人の一番をふまえて、自分にとっての一番を追求し続けるのだ、と話す。「自分が一番」等、大それたものは無いと。


丸昇の一番

    蜜のプールに浸かった大学芋
    蜜のプールに浸かった大学芋
     別仕込みの大根おでん
     別仕込みの大根おでん

そんな丸昇さんのポリシーは「大学芋」も「おでん」も東京風である事だ。

 

「大学芋」は昨今サツマイモそのものの甘みが深いため、その甘さを殺さないように蜜を調整している。

保温できるバットで蜜を多めに入れ、大学芋を浸す状態で販売をする。


この大学芋に蜜が浸透するため時間を設ける方法は開店以来、変えていない。これによって皮はパリッとしていながら、中の口当たりもしっとりした大学芋が完成。


そう、このしっとり具合、

蜜の浸透具合はクセになり、

舌だけでも味わう事ができそうな位だ。

このバッドが入ったケースを奥様があけると、あたたかで甘い香りが満たされる。



ちょうどスタートの「おでん」で心もお腹も満たされていた頃合いでも、

やっぱり大学芋は食べたくなってしまう。

「おでん」は昆布だしのきいた東京風の薄口。

大場店長は特に「おすすめ」というものは言わない。しかし沢山のおでん釜とは別のお鍋で作っている「大根」には並々ならぬオーラを感じずには入れない。


 ちなみに筆者は丸昇様の「大根」が大好きで必ず2つは頂く。

「大根」だけは少し濃い口で上品な甘みがある。この甘みが昆布だしに混ざると、心にまでお出汁が染み渡る気分になる。そして、お出汁が染み渡った大根の繊維はホクホクにほぐれてゆく。さすが大学芋専門店だと感じ入る。野菜の繊維やコンディションを計算した切り方。とにかく美味しい。

 

「鍋」で人を幸せにしたい・・そんなきっかけではじまったお店が

そして店に訪れたならば「甘い」も「しょっぱい」も両方頂かずにはいられない。

  1つの「鍋」コミュニティ

コメントが処狭しと貼られたイートインの壁。
コメントが処狭しと貼られたイートインの壁。
テーブルにあるペンと紙は、おでんの注文にも壁のコメントにも使われる。万能役。
テーブルにあるペンと紙は、おでんの注文にも壁のコメントにも使われる。万能役。

このような「大学芋」と「おでん」の絶妙な味わいでこの店は長年地域に根付き、愛されてきた。

しかし味に加えて、店長と奥様の人柄が何よりだと筆者は思う。

人柄の具現化が「イートイン」かもしれない。「大学芋」と「おでん」が食べられる席が12席ほどある。「やっぱり、あたたかくて美味しいものをすぐ食べて欲しい。それに、遠くから来た人が・・食べなくてもいい、ちょっと休める場所があったほうがいいでしょ」そう言った大場店長が振り返り見たイートインスペースには、近所の中学生と若い夫婦がおいしそうに大学芋を頬張っていた。この店はいつ行っても幅広い年齢層のお客様が幸せそうに座っている。ちょっと恥ずかしげな学生さんも、「大学芋・・おいしいですよね!」と声をかけてくれた。

皆、同じ「鍋」の仲間である。


丸昇様のダンディズム

厨房に貼る名言達。全ては大学芋作りに通ずる。
厨房に貼る名言達。全ては大学芋作りに通ずる。

丸昇さんの厨房には「老いて学べば死して朽ちず」と貼られている。いつまで経っても学び続ける、探求し続けることを毎日心に据えて大場店長は厨房に立つ。

また季節によって、大場店長の俳句が厨房に貼られる。

俳句の勉強会にも赴く時もあるそうで、その作品から自らを勇めるために貼っているのだ。誰かに教えるためではなく、自分の背筋を正すためと言う謙虚な姿勢。その姿勢はひたむきに大学芋とおでんを作る背中そのものだった。


ちなみに丸昇さん、地域の学校のPTA向けに大学芋の販売を行う事も多いそう。

しかし現在以上の規模を考える事はないそうだ。後継者となる方もいないそうだが、新たにお弟子様として入った方もいるとの事。

 

これからも変わらず、

あったかで おいしい「大学芋」と「おでん」を仲間と食べたいと思う。

そう、また来ようと思わせられる最強の大学芋専門店だ。

ねぎし丸昇店舗案内

ねぎし丸昇

住所:東京都荒川区東日暮里4-2-1

電話:03-3807-0620

営業時間:10:30−19:30

     売り切れ次第終了

※日暮里駅発の都営バス「下根岸駅」

   から徒歩1分。

※繁忙期はイートイン不可の時もございます。