【第三弾】大学芋インタビュー

おいもやさん興伸 川小商店:齊藤興平会長

「おいもやさん興伸」

※興平会長から頂いた大学芋の写真
※興平会長から頂いた大学芋の写真

興伸。東京浅草・巣鴨を中心とし計13の店舗を構える。美味しそうに輝くスイートポテト、芋羊羹、そして大学芋等が並ぶ。またテレビ番組にて大学芋の起源を辿る際は、大学芋専門店の代表として齋藤会長が検証。ここまで書けば興伸が大学芋専門店の代表店と言う事が過言ではないとはご理解頂けるであろう。

 「おいもやさん興伸」として名の知れている興伸であるが、運営会社の川小商店はさつまいも・じゃがいもの原料や加工品の卸売としてその側面も持つ。

そこで齋藤興平会長からインタビューさせてもらった川小商店の「これまでと今とこれから」を紐解いてゆきたい。

大学芋までの道のり

※オレンジ通り店のおいもやさん興伸の店頭
※オレンジ通り店のおいもやさん興伸の店頭

川 小商店は石焼き芋屋さんへの卸、じゃがいも加工メーカー(ポテトチップ・サラダ・コロッケ等)への卸等の全盛を経て、昭和59年に1つの転換期を迎えた。 小売への転換である。これはメーカー、スーパー等が問屋を通さない「中抜き」を行う環境になってしまった事が一番の原因であった。

卸 業者が小売業に進出する事は近年では珍しくない話であるが、当時では珍しく、大きな決心が要されるものだった。しかしこの決断は「小売に進出したい」とい う希望よりは「小売に進出しなくては生き残れない」という崖っぷちでの決断でもあった。老舗問屋を潰すか、小売進出か。

「さつま芋を見抜く目には誰よりも自信がある。

もし廃業したならば、本当に良い素材が消費者に届かなくなるかもしれない。

おいしく栄養価の高いさつま芋をもっと多くの人に食べてもらいたい。」

この思いがあったからこそ、有限会社興伸はスタートした。そして大学芋を筆頭とし数々のさつま芋スイーツを展開していった。

素材披露の場はお客様との会話の場。奥様社長の挑戦。

※興伸の店頭は賑わいを見せる
※興伸の店頭は賑わいを見せる

2004年 川小商店グループの経営が潤沢に進む中、興平会長65才の時、繊細な味覚を持つ奥様雅子様が社長に就任された。雅子社長は女性ならではのセンスで大学芋を 追求しつつ、トレンドをとらえたスイートポテト、アップルポテト等複数の商品を展開。結果、幅広い年齢層の男女が「さつまいものスイーツ」としての美味し さに気づく事ができた。これらの商品を商品化するまではかなりの歳月を費やした。ここには全ての素材を重んじて調理をする川小商店のスタンスが現れている のかもしれない。こうして季節ならではのさつまいもの旨みを活かして提供するノウハウはますます蓄積されていった。

その集大成として素材の目利きを活かした日本料理「我房」も浅草に開店。お客様との会話が重視された拠点はこうして増えていった。

興平会長と雅子社長の夫婦二人三脚の成果がこうして根付いた最中、雅子社長は帰らぬ人となってしまった。しかしこの二人の精神は現社長である浩一社長にも引き継がれているから安心、と興平会長。

おせっかい精神。おとなりさんにも美味しさを。

川小商店の理念は「農家・消費者との共存」である。そのために特に下記3点に命を費やしている。

まずさつまいもの「周年確保とその貯蔵管理」を計画的に行う事。そのためには契約栽培を継続し、農家とも密なコミュニケーションをとってゆく。

そして農家のつくるさつまいもの「本来有する味や特性を最大限に活かす」事。せっかくの素材も、生きるも死ぬも調理次第である。

最 後に「お客様とのコミュニケーションとおもてなし」も忘れない。時代が、世代が、どのような場所で何を求めているかは全社員で常に意識をしている。例えば さつまいもの食感はホクホクさが重要だったが、最近ではしっとりさに重きが置かれつつある等。どこで消費者の琴線が変わるかは見極めが難しい。

これらの認識を、興平会長、浩一社長、さらに社員の皆さんが共通の認識として持っているからこそ興伸はここまでの発展を遂げたといえよう。

これからの大学芋と興伸

※齊藤興平会長。生まれ育った浅草にて。
※齊藤興平会長。生まれ育った浅草にて。

興伸が大学芋を単なる「佃煮売り場」から「スイーツ」にしたという自負はある、と会長。

しかし現状では満足せずに、より多くの人に、スイーツとして食べてもらいたいと思っている。特に注目しているのは、「大学芋の食べられ方」。

長年経営してきた浅草や巣鴨は「コレ、美味しいからお隣さんにも配りたい」と言いながら自宅分、友人分と分けた購入が目立つ。他エリアは個人宅用が大半である。

この現状から、下町・山の手を問わず地域ならではの購入形態に根ざした販売方法を増やす事も視野にも入れている。もしくはより多くの人が沢山の人と交流するきっかけの真ん中に大学芋がありたいとも願っている。

 

私はもう第一線じゃない、でもやらなければいけない事・やりたい事が沢山あると会長。

実際にロータリークラブ、商工会議所、法人会、浅草商店連合会や町会等、本業以外でも一息つくにはまだまだ早そうだ。

浅草の街中をちょっと歩けば興平会長と気軽に挨拶する人々が大勢いる。

興平会長の活躍の場は、「人と触れ合う事」に根ざしている事を感じずにはいられない。その真ん中に大学芋がある。

そう思うと、大学芋の未来は非常に明るく見えてくる。



【場所】店舗一覧http://www.oimoyasan.com/shop.html

【食感】外トロカリ。中はホックホク。

【胡麻】黒胡麻。

【芋種】季節による。

【リンク】興伸HPhttp://www.oimoyasan.com/index.html